■ アジト

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確かにアジトが存在した。山田さん家の納屋の2階、そこが彼等のアジトだった。
毎週土曜の夜になると若者たちがそこに集会し、活動を行った。活動といってもたわいもない会話だけで、お酒を飲むとか、タバコを吸うとか、当然ながら薬をやるなどのことなどはなかった。ただその場に集い、政治を語るでもなく、恋を打ち明けるでもなく、自分たちの次の遊びを計画するだけの集まりのようなものである。
農家の納屋なので、防音設備などもないのに、夜中に大声を出して大騒ぎ、さぞかし近所から山田さん家には多くの苦情が寄せられていたのかも知れない。
アジトとはいっても、社長の寝室兼居間の居住空間であり、押し入れが東側にあり、ベッドは北側に、そして存在感のある唯一の娯楽品のステレオが中央に鎮座していた。サイモンとガーファンクルの「ミセスロビンソン」がよく流れていた。